「あの人の経歴は破天荒だよね」という言い方、よく耳にしますよね。ところが「破天荒」の本来の意味は「豪快で型破り」ではありません。今回は、意外と誤解されやすいこの故事成語の正しい意味と由来を、ビジネスでの使い方も交えてわかりやすく紹介します。
「破天荒」の意味
「破天荒(はてんこう)」とは、「今まで誰も成し遂げられなかったことを、初めて成し遂げること」という意味です。「前代未聞」「空前」「史上初」に近いニュアンスの言葉です。
ところが現代では「豪快で大胆なこと」「型破りで無茶なこと」という意味で使われることが多くなっています。文化庁の「国語に関する世論調査」でも、6割以上の人がこの意味で理解しているという結果が出ました。辞書によってはこの使い方を「誤用」としているので、きちんとした文章では本来の意味で使うのがおすすめです。
- 本来の意味:誰も成し遂げなかったことを初めて成し遂げること
- よくある誤用:豪快で大胆なこと、性格が型破りなこと
- 似た言葉:前代未聞、空前絶後、前人未到
故事成語ができた経緯・歴史
この言葉は、中国・唐の時代のお話から生まれました。当時の中国には「科挙(かきょ)」という、国の役人を選ぶとても難しい試験がありました。各地方からは毎年、優秀な人材が受験者として都へ送り出されていました。
ところが、荊州(けいしゅう:今の湖北省あたり)からは、何年たっても合格者が一人も出ませんでした。そのため人々は荊州のことを「天荒(てんこう)」と呼んだのです。「天荒」とは、天地が開ける前の混沌とした状態、つまり「何も実らない荒れ地」というたとえです。
そんな中、荊州出身の劉蛻(りゅうぜい)という人物が、ついに科挙に合格します。人々は「ついに天荒を破った!」と驚き、これを「破天荒」と呼びました。地元の長官は大喜びで「破天荒銭」として大金を贈ったとも伝えられています。ここから「誰もできなかったことを初めて成し遂げる」という意味が生まれたのです。
ビジネスシーンでの使い方(例文3つ)
ビジネスでは「業界初」「社内初」といった、新しい実績を称えるときにぴったりの言葉です。
- 創業以来、地方の小さな町工場が海外の大手メーカーと直接取引を始めたのは、まさに破天荒の快挙だ。
- 入社2年目で新規事業の責任者に抜擢されるのは、当社では破天荒の人事といえる。
- 商店街の店舗が協力してキャッシュレス決済を一斉導入したことは、この地域では破天荒な取り組みとして注目を集めた。
「破天荒な社長」と言うと「豪快な性格の社長」と受け取られがちです。人の性格ではなく、成し遂げたこと(実績)に対して使うと、本来の意味で誤解なく伝わりますよ。
原文の出典
出典は、中国・北宋時代の孫光憲(そんこうけん)がまとめた逸話集『北夢瑣言(ほくむさげん)』です。
【原文】
唐荊州衣冠藪澤、毎歳解送舉人、多不成名、號曰天荒解。劉蛻舍人以荊解及第、號為破天荒。
【読み下し文】
唐の荊州は衣冠の藪沢(そうたく)なり。毎歳挙人を解送するも、多くは名を成さず、号して天荒解と曰ふ。劉蛻舎人、荊解を以て及第し、号して破天荒と為す。
【現代語訳】
唐の時代、荊州は身分の高い人や学者が多く集まる土地だった。毎年科挙の受験者を都へ送り出していたが、ほとんどが合格できず、「天荒解(てんこうかい)」と呼ばれていた。劉蛻が荊州から送られて合格したとき、人々はこれを「破天荒」と呼んだ。
まとめ
「破天荒」は、合格者が一人も出なかった荊州から劉蛻が初めて科挙に合格したことに由来する、「前人未到の偉業」をたたえる言葉です。「豪快な人」という意味ではないので、使うときは少し注意してくださいね。あなたの会社やチームが「破天荒」な成果をあげたときこそ、ぜひこの言葉を使ってみてください。

コメント