「完璧に仕上げてから出したいけど、気づけば締め切りが過ぎていた…」という経験はありませんか?そんな方にぜひ知ってほしいのが「巧遅は拙速に如かず(こうちはせっそくにしかず)」という故事成語です。今回は意味や由来、ビジネスでの使い方をわかりやすく紹介します。
「巧遅は拙速に如かず」の意味
「巧遅は拙速に如かず」は、上手でも遅いより、多少下手でも速いほうがよいという意味です。
- 巧遅(こうち):出来は良いが、仕上がりが遅いこと
- 拙速(せっそく):出来は少し粗いが、仕上がりが速いこと
- 如かず(しかず):〜には及ばない、〜のほうがよい
つまり「時間をかけて完璧を目指すより、まずはスピード重視で形にしよう」という教えです。「手抜きをしていい」という意味ではありません。タイミングを逃すと、どんなに良いものでも価値が下がってしまうという考え方なんですね。
故事成語ができた経緯・歴史
この言葉のもとになった考え方は、約2500年前の中国・春秋時代に書かれた兵法書『孫子』にあるといわれています。作者は名軍師として知られる孫武(そんぶ)です。
孫子は「作戦篇」で、戦争が長引くと兵士は疲れ、お金や食料が足りなくなり、国の力が弱まってしまうと説いています。そのすきに、ほかの国から攻め込まれるおそれもあります。だからこそ「作戦が多少まずくても速く決着をつけて成功した例は聞くが、巧みな作戦で長引かせて得をした例は見たことがない」と述べたのです。
その後、この考え方は戦争だけでなく、文章の書き方や仕事の進め方にも使われるようになりました。宋の時代にまとめられた文章の手本集『文章軌範(ぶんしょうきはん)』には「巧遅は拙速に如かず」に近い言い回しが見られ、日本でもこの形で広まったとされています。
ビジネスシーンでの使い方(例文3つ)
スピードが勝負のビジネスの世界では、とても使いやすい言葉です。具体的な例文を見てみましょう。
- 例文1:「企画書は7割の完成度でいいから、明日までに一度見せてほしい。巧遅は拙速に如かず、だよ。」
- 例文2:「新サービスは完璧を待たずに小さく始めて、お客様の声を聞きながら改善していこう。まさに巧遅は拙速に如かずだ。」
- 例文3:「お客様からのお問い合わせには、詳しい回答が用意できなくてもまず一次返信を。巧遅は拙速に如かずで、早い対応が信頼につながります。」
最近よく聞く「アジャイル開発」や「MVP(必要最小限の機能で出す試作品)」も、まさにこの考え方と同じです。ただし、安全や法律に関わることなど、ミスが許されない場面では慎重さも大切です。場面に合わせて使い分けましょう。
原文の出典(書名・原文・読み下し文)
- 書名:『孫子』作戦篇
- 原文:故兵聞拙速、未睹巧之久也。
- 読み下し文:故に兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹(み)ざるなり。
- 現代語訳:だから戦争では、多少まずくても速く終わらせて成功した例は聞くが、巧みでも長引かせてうまくいった例は見たことがない。
なお、「巧遅は拙速に如かず(巧遅不如拙速)」という言い回しそのものは、のちの時代に『孫子』の考え方をもとにして広まったものと考えられています。
まとめ
「巧遅は拙速に如かず」は、完璧を目指して遅れるより、まず速く形にすることが大切だという、2500年前から受け継がれてきた知恵です。変化の激しい今だからこそ、「まず出して、あとで直す」という姿勢を大事にしたいですね。完璧主義で手が止まったときは、ぜひこの言葉を思い出してみてください。


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