和して同ぜず〜仲良くしても流されない、強いチームのつくり方

故事成語

会議で「本当は反対なんだけど、場の空気を壊したくないから黙っておこう」と思ったことはありませんか? 周りと仲良くすることと、周りに合わせることは、似ているようでまったく違います。今回は、その違いを2500年以上前に言い当てた故事成語「和して同ぜず」を、ビジネスでの使い方も交えてご紹介します。

「和して同ぜず」の意味

「和して同ぜず(わしてどうぜず)」とは、人と仲良く協調はするけれど、自分の考えを曲げてまでむやみに同調はしないという意味です。すぐれた人物(君子)のあり方を表した言葉として知られています。

ポイントは「和」と「同」の違いです。

  • 和:違いを認め合ったうえで、調和を保つこと
  • 同:違いをなくして、表面的に相手に合わせること

つまり「和」は多様な意見が共存している状態で、「同」は全員が同じ色に染まっている状態です。この言葉には続きがあり、「小人は同じて和せず」、つまり「つまらない人物は、うわべでは同調するけれど、心から打ち解けて協調することはない」と対比されています。

故事成語ができた経緯・歴史

この言葉は、中国の春秋時代(紀元前500年ごろ)の思想家・孔子の言葉です。孔子の死後、弟子たちが師の言行をまとめた『論語』に収められ、今日まで伝わっています。

「和」と「同」の違いについては、孔子と同時代の斉(せい)の国の名宰相・晏子(あんし)の、わかりやすいたとえ話も残されています(『春秋左氏伝』)。主君の景公が「梁丘拠(りょうきゅうきょ)だけは私と和している」と喜んだところ、晏子は「彼は同じているだけで、和ではありません」と答えました。

晏子いわく、「和」とはスープづくりのようなもの。水・火・酢・塩・梅など、異なる材料を合わせて加減するからこそ、おいしい味になります。一方、「同」は水に水を足すようなもので、誰も飲みたがりません。主君が「良い」と言うことにも悪い点があれば指摘し、補い合うのが本当の「和」なのだ、と説いたのです。

孔子の時代、君主のそばには機嫌をとるだけの家臣も多くいました。そんな中で「本当の協調とは何か」を問いかけたのが、この言葉だといえるでしょう。

ビジネスシーンでの使い方(例文3つ)

現代の職場でも、チームワークや組織づくりの場面でぴったり使える言葉です。

  • 会議の場面で
    「和して同ぜずの精神で、反対意見も遠慮なく出してください。そのほうが良い結論にたどり着けますから。」
  • 部下へのアドバイスで
    「チームの和を大切にするのは良いことだけど、和して同ぜずだよ。おかしいと思ったら、きちんと伝えてほしい。」
  • 組織づくりの方針として
    「わが社が目指すのは、和して同ぜずのチームです。多様な視点を持ち寄ることが、変化の時代を乗り切る力になると考えています。」

最近よく聞く「心理的安全性」や「ダイバーシティ(多様性)」という考え方にも通じます。意見の違いを恐れずに言い合えるチームこそ、本当の意味で「和」のあるチームなのです。

原文の出典

  • 書名:『論語』子路第十三
  • 原文:子曰、君子和而不同、小人同而不和。
  • 読み下し文:子曰(しいわ)く、君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず。

現代語訳すると、「孔子はおっしゃった。立派な人は人と調和するが、むやみに同調はしない。つまらない人はすぐに同調するが、心から調和することはない」となります。

まとめ

「和して同ぜず」は、違いを認め合いながら協力することの大切さを教えてくれる言葉です。空気を読んで黙るのではなく、相手を尊重しながら自分の意見を伝えることが、より良いチームや成果につながります。次の会議では、晏子の「スープのたとえ」を思い出して、ひとさじの「違う味」を加えてみてはいかがでしょうか。

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