仕事でもダイエットでも、「あと少しで終わる」と思ったところで気がゆるみ、思わぬ失敗をしたことはありませんか? 実は、そんな人間の弱さを2000年以上前に言い当てた言葉があります。今回は、ゴール目前こそ気を引き締めたくなる故事成語「百里を行く者は九十を半ばとす」をご紹介します。
「百里を行く者は九十を半ばとす」の意味
「百里を行く者は九十を半ばとす」は、「百里の道を行く人は、九十里まで来てやっと半分と考えるべきだ」という意味です。物事は終わりに近づくほど難しくなり、油断もしやすくなります。だからこそ、最後まで気をゆるめずにやり抜くことが大切だ、という教えです。
ポイントは、「九十里=九割」まで来てもまだ半分と考えるところです。数字で見ると大げさに感じますが、「残り一割に、それまでと同じくらいの力と注意が必要になる」と考えると、とても実感のこもった言葉だとわかります。
- 読み方:ひゃくりをゆくものはきゅうじゅうをなかばとす
- 似た言葉:「終わりよければすべてよし」「九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)に虧(か)く」
- 英語の近い表現:It’s not over till it’s over.
故事成語ができた経緯・歴史
この言葉は、中国の戦国時代(紀元前5世紀〜紀元前3世紀ごろ)の出来事をまとめた歴史書『戦国策(せんごくさく)』に出てきます。当時は、秦・楚・斉・趙などの国々が争いを繰り広げていました。中でも力をつけていたのが、のちに天下を統一する秦です。
勢いに乗る秦の王に向かって、ある人物が「詩に『百里を行く者は九十を半ばとす』とあります。これは最後の道のりの難しさを言っているのです」と忠告しました。今うまくいっているからといって、おごり高ぶって油断すれば、これまでの成功が台無しになる。天下統一という大事業は、最後の仕上げこそがいちばん難しいと伝えたかったのです。
なお、ここで引用されている「詩」は、現在の『詩経』には見られないため、古い時代に伝わっていた詩の一節だと考えられています。それだけ昔から、人々の間で語り継がれてきた知恵だったのですね。
ビジネスシーンでの使い方(例文3つ)
ビジネスでは、プロジェクトの終盤や目標達成の直前に、チームの気を引き締める言葉としてよく使われます。
- 例文1:「システム開発も最終テストの段階に入りました。百里を行く者は九十を半ばとす、です。リリースまで気を抜かずに確認を進めましょう。」
- 例文2:「補助金の申請書はほぼ完成ですが、百里を行く者は九十を半ばとすと言います。提出前に必要書類と記載ミスをもう一度チェックしましょう。」
- 例文3:「今期の売上目標まであと一歩です。百里を行く者は九十を半ばとすの気持ちで、最後の1か月も丁寧にお客様をフォローしていきましょう。」
注意を呼びかける言葉なので、部下を責める場面よりも、「ここからが本番だね」と前向きに励ます場面で使うと、相手に気持ちよく伝わりますよ。
原文の出典
- 書名:『戦国策(せんごくさく)』秦策(しんさく)
- 原文:詩云、行百里者半於九十。此言末路之難也。
- 読み下し文:詩に云ふ、「百里を行く者は九十を半ばとす」と。此れ末路の難きを言ふなり。
- 現代語訳:詩に「百里の道を行く者は、九十里を半分と考える」とある。これは、最後の道のりの難しさを言っているのである。
まとめ
「百里を行く者は九十を半ばとす」は、ゴール目前こそ油断せず、最後までやり抜くことの大切さを教えてくれる言葉です。仕事が終わりに近づいて気がゆるみそうになったら、ぜひこの言葉を思い出してください。最後のひと踏ん張りが、成果の質を大きく左右しますよ。


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