お店の前に行列ができていたり、人気の先生のところに相談に来る人がひっきりなしだったりする様子を見たことはありませんか?そんな「人がどんどん集まってくる状態」を表すのが、今回ご紹介する故事成語「門前市を成す」です。意味や由来、ビジネスでの使い方まで、わかりやすく解説していきますね。
「門前市を成す」の意味
「門前市を成す(もんぜんいちをなす)」は、ある家や場所に訪ねてくる人が多く、門の前がまるで市場(いちば)のようににぎわっている様子をたとえた言葉です。
ここでいう「市」とは、物を売り買いする市場のこと。昔の市場は人であふれかえる場所の代表でした。権力のある人や人気のある人のもとに、人が次々と集まってくる様子を表すときに使われます。
- 読み方:もんぜんいちをなす
- 意味:訪れる人が多く、門の前がにぎわっていること
- 似た言葉:門前成市(もんぜんせいし)、千客万来
- 反対の言葉:門前雀羅(じゃくら)を張る(訪れる人がなく、さびれている様子)
故事成語ができた経緯・歴史
この言葉のもとになったのは、中国・前漢の時代のお話です。哀帝(あいてい)という皇帝に仕えた鄭崇(ていすう)という家臣がいました。鄭崇はとてもまっすぐな人物で、皇帝が身内やお気に入りの人をえこひいきすると、遠慮せずに何度もいさめていました。
しかし、そんな態度は次第に皇帝にうとまれるようになります。そこへ、鄭崇をこころよく思わない人物が「鄭崇は一族と通じて、何かよからぬことをたくらんでいるようです」と告げ口をしました。
皇帝は鄭崇を呼び出し、「お前の家の門前は、市場のように人が集まっているそうではないか。それなのに、なぜ私にばかり口うるさく言うのだ」と責めました。これに対して鄭崇は「私の門前は市場のようでも、私の心は水のように澄んでいます」と答え、身の潔白を訴えたのです。
残念ながら鄭崇の訴えは聞き入れられず、彼は獄中で亡くなってしまいます。もともとは「人が集まりすぎて怪しい」という責める文脈の言葉でしたが、やがて「訪問者が多く、にぎわっている」という前向きな意味で使われるようになりました。
ビジネスシーンでの使い方(例文3つ)
現代では、お店や会社、人物の人気ぶりをほめるときによく使われます。ビジネスの場面で使える例文を3つご紹介します。
- 例文1:「新商品の発売以来、当店はまさに門前市を成す盛況ぶりで、スタッフ一同うれしい悲鳴を上げています。」
- 例文2:「補助金の申請時期になると、〇〇先生の事務所は相談者で門前市を成すほどだそうです。」
- 例文3:「地域に根ざした丁寧な接客を続けた結果、今では門前市を成す人気店になりました。」
相手のお店や仕事ぶりをたたえる言葉として使うと、印象のよいほめ言葉になりますよ。ただし、自分のことに使うと少し自慢っぽく聞こえることもあるので、場面に気をつけましょう。
原文の出典(書名・原文・読み下し文)
この故事は、前漢の歴史をまとめた歴史書『漢書(かんじょ)』鄭崇伝に記されています。
- 書名:『漢書』鄭崇伝(後漢の班固らが編さん)
- 原文:上責崇曰、君門如市人、何以欲禁切主上。崇対曰、臣門如市、臣心如水。願得考覆。
- 読み下し文:上(しょう)、崇を責めて曰く、「君が門は市人の如し、何を以て主上を禁切せんと欲するや」と。崇対へて曰く、「臣が門は市の如きも、臣が心は水の如し。願はくは考覆(こうふく)するを得ん」と。
「考覆」とは「取り調べて明らかにする」という意味です。鄭崇は「どうか調べてください、やましいことは何もありません」と堂々と答えたのですね。なお、『戦国策』にも、斉の王が広く意見を求めたところ人が殺到したという「門庭市の如し」という似た表現が登場します。
まとめ
「門前市を成す」は、訪れる人が多くにぎわっている様子を表す故事成語です。もとは忠臣・鄭崇が責められた場面の言葉でしたが、今ではお店や人の人気ぶりをたたえるほめ言葉として使われています。あなたのお店や会社も、「門前市を成す」と言われるような、人が自然と集まる場所を目指してみてはいかがでしょうか。

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